時給1800円

近い未来の物語。
アインシュタインの相対性理論が打ち砕かれて、光よりも早い物質が発見されるといそれまでの常識がすべてゼロになってしまいどんどんと新しい理論が誕生した。
それを受けてタイムマシーンの研究が世界規模で行なわれるようになり、遂に時間旅行が可能になった。
しかし簡単に誰でもいけるというものではない。
まだ研究段階で、過去に介入することで未来がどう変化するかというデータをとっている段階だった。
それでも、過去にいけることがわかれば、利用したくなるのが人の常。
許可なく時間旅行をしてしまうような人間も現れてくる。
未来に影響与えるような行為を起こさせないためにも、監視するチームが必要となり、
タイムパトロールが発足することとなった。
フリーターの田村信二はそう思って面接を受けにきた。
しかし、そこには疑わしき部分がたぶんにあった。
そもそも、なんの資格もないようなフリーターがタイムパトロールに採用されるわけがない。
それより以前に、本当にタイムマシーンなんて出来たのか。
ニュースでそんな話は聞いた事もない。
にわかには信じがたい話だった。
しかし、時給に釣られて田村は応募したのだ。
時給1800円は、コンビニで980円しかもらっていない田村にとっては夢のような金額だった。
「もし怪しい宗教の勧誘だったとしても、時給1800円もらえるのであれば、悪魔に魂を売ってもいい」
と田村は思っていた。
しかし、面接会場には誰も来ていなかった。
他の応募者どころか、面接官すらいない。
新手の詐欺か。それともマルチ・・・。
いろいろな思いが田村の頭の中を舞っていた。
しかも、面接会場とは名ばかりの怪しげな部屋。
何故か鹿の首から上の剥製が不似合いに飾られている。
「よく見ると鹿ではない」
田村はそう思った。
馬に角が生えていた・・・。
「よく出来た作り物だ」
田村は徐々にその場所にも慣れてきて、周りを観察する余裕が出てきた。
じっくり見ると馬に角が生えている剥製以外にも怪しげなものがたくさん並んでいる。
スフィンクスと大仏のツーショット写真を見つけたときにはさすがの田村も苦笑を禁じえなかった。
「センス悪すぎ」
気が付くとそうつぶやいていた。
ほかにも胡散臭そうなものがそこら中にあった。
しかし金メダルはどうも本物らしかった。
さすがにひとつくらいは本当に自慢できるものがあるんだろう
と思いじっくりとみるとモスクワオリンピックのものだとわかった。
一緒に飾られている写真から、マラソンで優勝しているようだった。
日の丸に包まれている写真も
・・・とそこまできたときある事を思い出した。
「日本が参加していないオリンピックか確かモスクワだって言っていた」
田村はテレビのクイズでそのことを聞かされたばかりだった。
「じゃ、これもやっぱり偽物・・・」
田村はここにいてはいけない気がし始めていた。

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